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ロッテルダムと懐古主義

  • 執筆者の写真: Kodai Hojo
    Kodai Hojo
  • 2018年6月15日
  • 読了時間: 4分

(オランダに向かう、キャセイ・パシフィックの飛行機の中から)

例えば、朝7時に起きた人が夜12時に寝るとすると、起きている時間は17時間。

香港経由でオランダまで行くと、それくらいの時間を飛行機の中で過ごすことになる。

朝6時に着く便だと、その長いフライトの後にもう一度1日が始まることになるので、夜にホテルに着く頃にはもう足の感覚が無くなりかけてたりする。

そんな日程で、留学する予定の妹と一緒に、家探しをするためにオランダに向かった。

(初日、アムステルダムセントラルステーションにて)

飛行機の中では5本映画を見たが、その中でも「Kodachrome」という映画が印象的だった。

この映画は、癌で死ぬ間際の写真家が、疎遠になってしまった音楽プロデューサーである息子とカンザスに向かう旅に出るというお話。

映画のタイトルでもあるコダクロームというフィルムは、イーストマン・コダック社が2009年に販売を終了した写真用のフィルムで、重厚な発色や、高解像度が特徴で、ドキュメンタリー写真家などが愛用していた。当然、現代のデジタル写真に比べると少し暗い描写で、解像度も劣ってしまうのだけれど、出版物などの印刷用のフィルムの定番として、広く使われていたらしい。

ポール・サイモンが1973年に「僕のコダクローム」というシングルをリリースしていて、

「お母さん、僕のコダクロームを取り上げないで」

と歌詞にはあるが、2009年に世界中から取り上げられてしまうことになるとは、ポールサイモンも想像してなかったはずだ。

また、このフィルムは現像方法が難しいために、メーカー指定の限られた店でしか処理できなかった。

コダクロームの販売終了後、最終的にはカンザスにあるドウェインズ・フォト社のみが唯一の現像所となってしまうわけだが、この映画ではその歴史に忠実に、カンザスの現像所に最後の現像をするために旅に出る。

この映画をみるまではこのフィルムの名前すら知らなかったが、その写真が持つ独特の色味はどこかで見たことのある懐かしいトーンだった。

(セントラルステーションを通過する路面電車)

カンザスに向かう車の中で、息子が地図アプリを使っていたので、父親はそのiPhoneを取って道路に投げ捨て、「アナログのみだ」といって紙の地図を取り出すシーンがある。

そんな父親がカンザスでフィルムを現像した直後、コダクロームの使用期限と同時期に亡くなってしまうのは、時代が移り変わる象徴として描かれているように思えた。

(ロッテルダムにある屋内マーケット”マルクトハル”)

6月のオランダは日没の時間が夜の10時なので、朝から夜まで同じような明るさと気温が続く。

その気候も相まってか、人々はより幸せそうで親切に思えた。

電車の切符を買おうとしているだけで、「どこに行こうとしてる?」と向こうから話しかけてくるくらい、人と人との距離が近い。

切符の買い方はiPhoneで調べればわかるんだけど、旅先で他人とコミュニケーションを取ると、少し気分がいい。

(ロッテルダムで出会った26歳のドニー)

ロッテルダムのニューウェ・マース川沿いの道で、ドニーという大柄な男性と出会った。

生まれてから26年間ロッテルダムで生活している方で、妹と散歩している最中に話しかけてくれた。

最終日に彼の車で観光に連れて行ってくれることになるわけだが、道中はオランダ語を教わったり、地元人しか知らない名所に連れて行ってくれた。

(ニューウェ・マース川沿いの自転車用道路)

オランダでは、レンタル自転車を使って街を移動した。人口よりも自転車が多いこの国では、自転車用の道路があり、毎日多くの人が自転車を使って移動している。

電車やタクシーより自由で、ふと気になったものを見に寄るのにとても便利なので、知らない街を移動するのにぴったりだ。

(唯一内見に行くことができた部屋と、僕の妹)

ロッテルダムでは5、6件ほど不動産屋に行ったが、「学生は不可」だとか、「1400ユーロ以上の物件しか扱っていない」とかで、家を見つけるのはかなり難しかった。

こちらはそんな中唯一内見に行くことができた部屋。

アメリカ同様、アパートに人がまだ住んでいるうちから室内を見にいくことができる。

結局この部屋を契約することになり、とりあえず旅の目的は達成。


 
 
 

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